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食物アレルギーの治療

2018年08月20日

小児科 斎藤博久

1. アナフィラキシーをおこしたらエピペンを携帯

ある食品を摂取してすぐにアナフィラキシー(全身じんま疹、呼吸困難、繰り返す嘔吐下痢、血圧低下などの複数の臓器にまたがる症状がみられる場合アナフィラキシーと診断)をおこした既往があったり、食物経口負荷試験で陽性であったりした場合は、食品表示などにいつも注意するなど、その食品を避ける必要があります。アナフィラキシーの既往がある場合は、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)処方の対象になりますので、あなたやあなたのお子さんの命を守るため、是非、処方してもらってください(当クリニックでも処方します)。

2. 栄養食事指導

成人でピーナッツなど一つの食物に対してのみアレルギー反応を起こす場合は、徹底して制限を続けることに尽きますが、成長期で複数の食物に対してアレルギーがある場合は、栄養食事指導が必要になることがあります。その場合、必要最小限の除去、安全性の確保、栄養面への配慮(食物制限は定期的に栄養面を評価しつつ行う)、患者と家族のQOL(生活の質)維持が重要であり、アレルゲン特異的IgE抗体が陽性だからといって、全て食事摂取を制限するようなことはしてはいけません。

家庭内の食事に関しては十分吟味することが可能ですが、給食や外食での誤食は重大なアレルギー反応をおこすことがあります。それらを極力防ぐために、食品表示法が制定され、業者は卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生のアレルゲンとなる頻度の高い特定原材料が含まれている場合、表示をする義務が課せられるようになりました。また、頻度として低いものの、時に強いアレルギー反応をおこすような、アワビ、イカ、イクラ、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、クルミ、ゴマ、サケ、サバ、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マツタケ、モモ、ヤマイモ、リンゴ、ゼラチンについては表示が推奨されています。もちろん、これ以外のものは、表示されていない場合もあるので、注意が必要です。

3. 経口免疫療法は研究途上であり自己判断は危険

10年くらい前から、食物アレルギーを治すために、アレルゲンとなっている食品を少しずつ食べていく経口免疫療法が臨床研究としてよく行われてきました。確かに、普通に食べられるようになる子どももいる一方で、体調が悪い場合などに自宅でその食品を食べて重大な事故がおこることも指摘されています。この経口免疫療法は確立した治療法ではなく、研究段階の実験的な手法であることを理解し、自己判断で実施しないようにしてください。

4. 血液検査陽性の理由で食事制限をしてはいけない

逆に、血液検査で陽性になった食品を全て食べないようしている例も時々見受けられます。特に乳児期のアトピー性皮膚炎の皮膚からは室内のホコリに混じった微量の食物抗原が侵入して、検査をすれば多数の食物抗原が血液検査で陽性と判定されることがあります。そのような子どもに対して厳密な食物除去を実施すると栄養失調で入院が必要になることがあります。なお、インターネットなどによるやり取りを通して食物に対するIgGやIgG4抗体を測定し、それをもとに食事制限をしている人も時々見受けられますが、日本および世界各国のアレルギー学会でその有用性は証明されておらず推奨しないことが発表されています。いずれにしても、血液検査で陽性だからといって食事制限することは意味がないばかりか、害を及ぼすことがあることを理解していただきたいと思います。

5. 食物(鶏卵)アレルギーの発症予防

 以前は、鶏卵、牛乳、ピーナッツなど食物アレルギーをおこしやすい食品は、妊娠中や授乳中から避け、離乳期の摂取を遅らせるべきだと言われていました。しかし、その実態を調査すると妊娠中や授乳中にこれらの食品を制限し、離乳期での摂取を遅らせても、これらの食物に対するアレルギーの発症を予防できないことがわかりました。むしろ、鶏卵などは生後半年から食べさせた方が鶏卵アレルギーの発症を予防できる確率が高いことがわかりました。しかし、生後半年ですでに鶏卵アレルギーになった子どもには鶏卵を制限すべきであり、子どもによって注意すべき点が異なります。これらの注意点に関しては、一般の方向けに日本小児アレルギー学会から声明 http://www.jspaci.jp/modules/general/index.php?page=article&storyid=23 が出ていますので、是非、参考にして下さい。

ここでは、詳しく述べませんが、鶏卵など家庭でよく消費する食物は家のホコリの中にも存在しています(ダニ抗原よりも多いくらいです)。赤ちゃんのときに、湿疹・アトピー性皮膚炎があると、食べなくても、それらの食物に対する特異的IgE抗体が陽性となってしまいます。食物アレルギーなど他のアレルギー疾患の発症を予防するために、乳児期の湿疹はなるべく早く治療してあげた方がよいということが言えます。


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